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●コラム【とかちの窓から】 第74回
『ニキビとサプリメント(ビタミンA、Eと問題点)』
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こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です 今年の夏は暑かったですね。9月に入っても、当地では最高気温が連日30度を越えていました。それでも朝晩は涼しい風が吹くようになってきていました。 夏の終わりを決定的に気づかせてくれたのが、9月9日の『先生、今年の夏も乗り切りましたね』という患者Aさんの一言でした。 確かに、その日を境に気温の低下傾向が強まり、空もいっそう高く感じられるようになりました。 Aさんは、なぜか節目ごとに受診される、私にとっては印象深い患者さんです。 開業10周年の平成19年3月3日にも受診され、『きれいなお花がいっぱい届いてすごいですね。開業10周年おめでとうございます』と言われて、大変感激したこともありました。 そうそう、何事にも『タイミング』がありますね。なかなかニキビが良くならないのは、ちょっと『タイミング』がずれているだけかもしれません。 少し時間を置いて、再チャレンジしてみましょう。きっとニキビ改善の『タイミング』が巡ってきます。 ニキビの治療には、お薬の力(=テクニカル/技能面)ばかりでなく、根気よく治療に取り組む力(=メンタル/精神面)も大切です。 このコラムが、その両方をうまくケアしていければ最高だなと思いつつ、自分自身が一歩でも前に進むつもりで、毎月お届けさせていただいています。 とかち美白研究所では、VCローション等を購入されている方に会報を毎月発行しております。そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)』というものを載せています。 (思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)
これは私が皮膚科診療を20年やってきた中で非常に重要と思い標語に したものです。 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。このコラムでは、第15回までは『ニキビ治療の4ヶ条』を系統立てて解説してきました。 第16回からは『落ち穂拾い』と題して、『ニキビ治療の4ヶ条』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。 (バックナンバーは http://www.bihaku-labo.com/columnframe.htm をご覧下さい。) 前回は、引き続き『サプリメント』について、特に、ニキビ改善に有効とされるビタミンC、そして最近話題のフィトケミカルを取り上げてみました。 今回は、ビタミンA、Eと『サプリメントの問題点』について考えたいと思います。 ビタミンA(化学名:レチノール)の主な働きは、以下の通りです。直接・間接的にニキビに影響します。 1)皮膚や粘膜の正常化、粘液の産生に関与します 2)不足すると乾燥しやすくなり、肌がかさつく、目が乾く、髪が傷む、爪がもろくなる、などの症状があらわれます。『目のビタミン』といわれ、夜盲症になることもあります。 肌のかさつきは、皮膚のターンオーバー障害を起こします。皮脂腺の出口が狭くなりニキビが悪化します。 3)大量摂取(6,000μgRE)では、頭痛、めまい、吐き気などの中毒症状(過剰症)をおこすことがあります。 4)ビタミン剤の場合、決められた量を服用していれば過剰症の心配はほとんどありません。 5)レバーのようにビタミンAを多く含む食品を同時にとる場合、注意が必要です。 1日の摂取量の推奨基準は、 成人男性: 750μgRE 成人女性: 600μgRE 妊婦: +70μgRE 授乳婦: +420μgRE 上限量:3,000μgRE(成人男女、妊婦・授乳婦含む) 2003年 国民健康・栄養調査による摂取量(20〜59歳平均)では、男性:880μgRE 女性:863μgREとクリアされているようです。 一般用医薬品として認められているビタミンAの1日最大分量は1,200μgREです。 ここでちょっと補足です。 ビタミンAは、レチノールやカロテンといった体内でビタミンAとして働く栄養素の総称です。 レチノールは、レバーやウナギなど動物性のものに含まれている、ビタミンAの効力をもつ成分です。 カロテンは、主に緑黄色野菜などの植物性食品に含まれており、体内でビタミンAに転換されます。 カロテンには、α、βなど4つの種類があります。野菜に含まれるカロテンのほとんどがβ-カロテンで、他のものに比べて約2倍のビタミンAとしての効力を持っています。 また、β-カロテンには、抗酸化作用があることが知られています。 体内にビタミンAが十分にあれば、転換されずにβ-カロテンのままで働くので、体内に蓄積されませんので、過剰症の心配はありません。 食品中のビタミンA含有量の例を示します。 ウナギ(蒲焼き:二分の一尾): 1,200μgRE 鶏レバー(40g): 5,600μgRE(!!) にんじん(生100g): 700μgRE モロヘイヤ(生100g): 840μgRE レバーの食べ過ぎは本当に良くないみたいですね。焼き鳥や焼き肉ではつい多く食べてしまいます。注意が必要ですね。 次に、ビタミンEです。 ビタミンE(化学名:トコフェロール)の主な働きは、以下の通りです。これも直接・間接的にニキビに影響します。 1)体内の脂肪の酸化を防ぎ、"体のサビ"とも言われている過酸化脂質の増加を抑える抗酸化作用があります。 2)末梢血管を拡張し、血液循環をよくする働きもあります。 3)ビタミンEが不足すると血行が悪くなり、冷えや肩こり・しもやけなどの症状がおこりやすくなります。 4)皮膚の場合、色やつやが悪くなり、シミなどができやすくなります。 5)ホルモンバランスの乱れによって月経不順をおこしやすくなります。 1日の摂取量の推奨基準は、 成人男性:18〜29歳 9mg、30〜49歳 8mg 成人女性:18〜49歳 8mg 妊婦: +0mg 授乳婦: +3mg 上限量は、幅があります。 成人男性:18〜49歳 800mg 成人女性:18〜29歳 600mg、30〜49歳 700mg(妊婦・授乳婦含む) ※ α-トコフェロールについて算定。 2003年 国民健康・栄養調査による摂取量(20〜59歳平均)では、男性:9.9mg 女性:11.0mg(通常の食品のほか、強化食品と補助食品を含む)とクリアされているようです。 一般用医薬品として認められているビタミンEの1日最大分量は300mgです。 ビタミンEは、植物油、魚脂、種実類などに多く含まれています。 ひまわり油(大さじ1杯:13g) 5.0mg マヨネーズ(大さじ1杯:12g) 1.8mg さつまいも(生1本:200g) 3.2mg アーモンド(フライ、味付:30g) 8.8mg ここでちょっと補足です。天然のビタミンEには、トコフェロール、トコトリエノールという2つのグループがあります。 グループにはそれぞれ、α、β、γとδ体があり、天然には少なくとも8種類のビタミンEが存在します。ビタミンEの生物活性(効力)はそれぞれ異なりますが、-トコフェロールが最も強いので、一般的には、ビタミンEというと-トコフェロールをさします。 やはりビタミンA、ビタミンEについても、『普段の食事』が第一。普段の食事がきちんとできていれば、十分摂取できます。 食事で摂取できないようならば、『サプリメント』も選択肢の一つです。 ビタミンA、Eを、ビタミンB2、B6、C、フィトケミカルと同様、バランス良く賢く補給し、ニキビ改善につなげ、きれいな素肌を手に入れましょう。 最後になります。サプリメントの問題点は何でしょう? 私が主に考えているのは、以下の3つです。 1)サプリメント自体の品質に問題がある(量、不純物、製造国等) 2)医薬品やサプリメント同士の相互作用、長期に摂取した場合の人体に対する影響が不明 3)サプリメントに頼るあまり、普段の食事がおろそかになる 2009年10月 8日(木)に放送された、NHKの報道番組、クローズアップ現代(NO.2798)では、『どうつきあう サプリメント 明らかになる“健康被害”』と題して、健康のために摂取したサプリメントで健康を害するケースや、サプリメントが病気の治療に使う薬の効果を弱めてしまうなど、サプリメントの問題点やどう付き合うべきなのか特集されていました。 そこでは、ほぼサプリメントだけで生活する人も紹介され、食べることを大きな楽しみとする私は大変驚きました。 また、いつもの週刊誌ネタで申し訳ありませんが、週刊文春2010.9.6号、劇団ひとりさんの『そのノブは心の扉』という連載では怖いエピソードが紹介されていました。 劇団ひとりさんは、『効いているのかもしれない』と思いながら、サプリメントの数が増え、日に十錠くらいのサプリメントや漢方を飲んでいたそうです。 一年に一度の人間ドックで、いつもは大抵「異常なし」だったのに、昨年はガンマGTP値が746(通常は20前後)と急上昇。お酒もあまり飲まないため入院して、突き止めた原因は? 『漢方の一種が肝臓と合わず、肝臓の働きを弱め、さらに大量のサプリを分解するために肝臓がフル稼働していたため』とわかったそうです。 『それから僕はサプリを飲んでいない』と語る、劇団ひとりさん。非常に教訓的なお話ですね。 今回のポイントは以下の通りです。
今回、野菜、果物、サプリメントについていろいろ勉強して、自分の生活に活用できたことが、多くあります。 私自身はサプリメントは使用していませんが、果物や野菜の摂り方に工夫ができました。 例えば、オレンジの食べ方ですが、皮を剥いた後、果肉を包んでいる袋(じょうのう膜:フラボノイド類を含む)をそのまま食べるようになりました。 そして、ブドウはこれまであまり食べませんでしたが、アントシアニンを少しでも補給するため意識的に食べるようになりました。 サプリメントの勉強は、今の食生活を反省し、より向上させる良いきっかけになりました。 次回は、趣きを変えて、ニキビに対する私の考え方『ニキビ上手』について考えてみたいと思います。 それでは。 おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム) (昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。平成14年とかち美白研究所開所。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士) |